はじめに


  実(じつ)は、彦根(ひこね)のことを知(し)っているようで案外(あんがい)何(なに)も知らなかったという経験(けいけん)をした覚(おぼ)えはないでしょうか。
  「灯台下暗し(とうだいもとくらし)」という言葉(ことば)もあるように、残念(ざんねん)ながら私(わたくし)たちは身近(みぢか)にあるものに対(たい)してつい無頓着(むとんちゃく)になってしまうことがあります。
  例(たと)えば、琵琶湖(びわこ)に沈(しず)む夕日(ゆうひ)にしても彦根城にかかる月明(あ)かりにしても、いつもそこにあると思うと、いつでも見られるとばかりに関心(かんしん)や興味(きょうみ)がなかなかわかないといったふうに。
  しかし、しばらく彦根を不在(ふざい)にした後(あと)で不意(ふい)にそれらを目にしたとき、まるで生まれてはじめて発見(はっけん)したかのようにしみじみと感動(かんどう)したりすることがあります。
  もしかして、そんなふうに思えるようなものが彦根のまちかどや道ばたにもいっぱいあるのではないだろうか。とにかく、ありのままの彦根のまちを歩(ある)いてみよう。
  まちをゆけば・・・きっとあちらこちらであれやこれやいろいろなものに出会(であ)うことができるだろう。そんな出会いをささやかな喜(よろこ)びとして、先人達(せんじんたち)から受(う)け継(つ)いだ私達の生活(せいかつ)の舞台(ぶたい)をめぐってみよう。そんな思いからこの「ひこねあれこれ60」はスタートしました。
  ここに取り上げたものは、まちかどや道ばた、路地(ろじ)や横丁(よこちょう)などでごく当(あ)たり前に目にするものばかりです。いつもとは少(すこ)し違(ちが)う目で地域(ちいき)をながめてみたとき、地域はまたいつもと少し違った姿(すがた)を見せてくれるのかもしれませし、今そこに住む私たちに静(しず)かなエールを送(おく)ってくれているような気さえしてきます。
  折(おり)しも今年(ことし)は、彦根市にとって「市制(しせい)施行(しこう)60周年(しゅうねん)」を迎(むか)える記念(きねん)すべき年となりました。60のテーマであれこれ取り上げたのは、60周年という市制の年輪(ねんりん)にあやかったものです。
  郷土(きょうど)については、すでに先人の手によって編(あ)まれた幾冊(いくさつ)もの郷土史(し)があり、取(と)り上(あ)げたものの中には、これらの優(すぐ)れた業績(ぎょうせき)の道案内(みちあんない)によってその来歴(らいれき)への理解(りかい)と興味(きょうみ)の深(ふか)まるものがあると思います。あらためて先人の功績(こうせき)に感謝(かんしゃ)するとともに心から敬意(けいい)を表(ひょう)します。
  最後(さいご)に、市民の皆様方(みなさまがた)からの「あれがあるならこれもある。これがあるならあれもある。」そんな賑(にぎ)やかな反応(はんのう)を期待(きたい)しつつ、この小冊子(しょうさっし)の発行(はっこう)によって地域(ちいき)への関心(かんしん)が少しでも高(たか)まりますことを期待します。 はじめに
平成(へいせい)9年3月 
    彦根市

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